実験・評価

1.富山大学芸術文化学部 木工授業

● 学生アンケートの実施

木工道具の仕立て方、そして木材加工技術に関する木工具実習および家具デザイン・制作の授業におい て、技能を可視化した見本等を活用して技能伝承方法を試み、アンケートを実施してその効果を継続して検証している。設問は「あなたの制作過程で、役だった 教材や指導方法は何ですか?」である。

演習項目全体では、「実際に自分でやってわかった」や「先生がやるのを見てわかった」というものが多 く、「黒板に書く」や「口頭で説明」は効果が少ないことがわかった。やってみせることは技能伝承に基本的に重要であることが再認識された一方で、演習項目 ごとでは、たとえば、「研磨時に刃物のどこに力が入っているか」がわかったのは、「具体的な圧力試験紙」であり、「鉋の裏金の役割がわかった」のは、「切 削の様子がわかるように側面に窓をあけた可視化工夫した鉋」であり、「研磨の刃先の変化を理解した」のは「顕微鏡での観察とモニター画像」であった。ま た、指導者自らが作成した図解テキストも理解を深めることの一つであった。

海外 実験「スウェーデン 鉋の研ぎの実験、模擬授業」

平成25年2月、スウェーデンのリンショーピン大学(カールマルムステン校)にて、鉋の研ぎの授業を実施。言葉の通じにくい海外において、日本の技能を伝える手段として、さまざまな教材で理解が可能かどうかを実験した。(用紙調査、聞き取り調査、ビデオ調査)

また、ダーラナ地方(工芸が盛んな地方)の工芸専門学校で同様に、研ぎの授業を実施し、その関心度や教材からの理解を調査した。(聞き取り調査)

準備した教材は、鉋の研ぎを技能者が説明し実施するビデオ、木材で作成した刃や直し台などの模型(わかりにくい部分を強調)、工程見本、圧力試験紙、テキストなど18種類である。講義の最後に、教材別に理解度をアンケートし、意見を収集した。

●リンショーピン大学カールマルムステン校 2013年2月7日 木工室にて

参加者:教員3名、学生18名、その他社会人数名(自由参加)

アンケート集計

時間の都合上、説明を省略した教材を除けば、準備した教材の多くが理解に有効であることがわかった。
●ダーラナ地方 工芸専門学校

参加者:学生12名、教員2名

3. 真夏の「発想トレーニング」ワークショップ

構築した作業環境の中で、制作者が限られたテーマ、材料、図面、時間をもとにアイデアを練り、製作する。その際に環境(空間、道具の配置、教材などなど)がどのように制作者を支援するのか、制作者自身はどのように感じるのかを実験する。

本ワークショップの概要は以下である。

趣  旨私たちは何かを発想する時、とっぴで他より抜きんでる発想を狙う傾向があります。本ワークショップは、こうした大きな跳躍力を鍛えるのではなく、地道で粘り強い発想方法を体験して、「小さな一歩、大きな進歩」の大切さを実感することを目指します。

日  時平成26年 8月30日(土)~31日(日)

場  所:富山大学 芸術文化学部 木工実技室 木工機械室

メンバー:主宰 小松研治(研究代表者)

       手考会(木工制作研究会)会員数名、本学部学生6名・留学生3名(予定)

       記録 小松裕子(研究分担者)、井上時夫(手考会事務局長)

テーマ :「タオルハンガーの制作」

 ① 同封の3面図をもとに、限られた要素をじっくり展開し、制作して下さい。

 ② 事前にアイデアを決め図面や模型等を準備してきてください。

 ③ 1日半で制作可能なアイデアにまとめてください。

 ④ 制作に使用する木材はこちらで大まかに製材したものをご用意致します。

 ⑤ 制作に必要な個人の道具はそれぞれでご用意ください。

 ⑥ 材料はブナとアッシュ

日  程

○30日(土) 環境やテーマ説明、制作

○31日(日) 制作、プレゼン、講評会